シンガポールの思い出

2010-2014年、星国に滞在していたときの記録

シンガポールの選挙

今年は選挙、というのは年初から聞いていましたが、「選挙日っていつなの?」と聞くと「まだわかんない」「何月くらいかわかるでしょ?」「いや、わからない。たぶん前半。でもそれ以上はわからない。いきなり決まるから」という(自分から見ると)不思議な会話を現地の友人と何度か交わしました。

そしてとうとう先週金曜に「5月7日が選挙日」と発表があり、選挙運動期間がスタートしました。

選挙をはじめとしてシンガポールの政治には(日本人の政治素人である自分から見ると)不思議なところがいろいろあり、なかなかおもしろいです。主に与党が統治しやすいように設計されている制度ですが、しかし選挙自体はいたって民主的かつクリーン、不正もありません。ではどんなシステムなのか、選挙関連のものをいくつかピックアップしてみると・・・

  • グループ選挙区制を取り入れている

グループ選挙区制とは、得票率の高かった政党が、その選挙区の議席(5~6)を総取りする仕組み。政党は選挙に際してグループ定数分の立候補者を用意しなければならず(=立候補に必要な供託金もたくさん必要で)、金銭的・人員的にゆとりのない野党にとっては厳しい。 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/skk/grp/12/rp200907.pdf (日本語)

  • 選挙期間直前に選挙区割りの見直しが行われる

この見直しを行うのは与党が絶対多数を占める現政府なので、結果的に与党に有利なように区割りしているのではないかという憶測が飛ぶ。 http://en.wikipedia.org/wiki/Group_Representation_Constituencies

  • 選挙前に与党から国民への「ボーナス」が出る

経済成長率がよかったご褒美として国民に‘Grow & Share’ Package'、つまり「成長還付金」という感じのボーナスが支払われる。このボーナス自体は選挙時以外もあるが、今年はとりわけ大規模で、その額、国民1人当たり100~800Sドル(約6,600~5万3,000円)。今年は選挙1ヶ月前の4月上旬に、内訳の発表があった。 http://www.singaporebudget.gov.sg/budget_2011/key_initiatives/families.html http://news.nna.jp/free/news/20110505spd002A.html (日本語)

  • 野党を選出した区域への嫌がらせがある・・・といううわさ

政府の開発投資が来なくなる、具体的にはHDB(国民の大多数が住む公団住宅)や公共施設の修繕が後回しにされる、電気代が高くなる等のうわさがある。 http://mike-shimada.blog.so-net.ne.jp/2011-05-01

  • 建国後今まで毎回、与党の圧倒的勝利が続いている

前回(2006)・前々回(2001)ともに84議席中82議席が与党を占めている。 http://en.wikipedia.org/wiki/Elections_in_Singapore

・・・という感じでどう考えても与党が勝つような選挙戦ですが、公示があってから約1週間、シンガポール国内での政治熱はなかなかのものです。各地にあるサッカー用スタジアムで各政党ごとの集会があったり、満員の集会の写真をFacebookでアップロードする人がいたり、FBのプロフィール写真を政党ロゴにする人がいたり、友人とごはんを食べると政策論議になったり、さらに自分としては驚きなことに会社で同僚と選挙の話をしている人もいます。

選挙が義務制で全員ほぼ間違いなく投票することも関係あるかもしれませんが、この熱っぽさは、今の日本には絶対的に不足しているものだなと思いつつ観ています。ちなみに現地の友人曰く、この雰囲気は選挙公示から投票日までの1週間限定とのこと。4年に1回1週間だけ、国を挙げて政治について考える。おもしろいし、なかなか良いシステムだと自分は思います。

  • 義務投票制を取り入れている。

投票を棄権した場合の罰則は、選挙人名簿からの抹消。棄権がやむを得ないものであったことを明示するか、5Sドル(約330円)を支払えば、選挙人名簿再登録可能。罰則適用は厳格。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%A9%E5%8B%99%E6%8A%95%E7%A5%A8%E5%88%B6